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甘いものが好きな私は、よく、スーパーなどの食品売場で、あんころ餅やみたらし団子のショーケースを前に、立ち止まってしまうことがあった。 「お嬢ちゃん、買うの、買わないの?」ショーケースの向こうの太ったおじさんが、シビレを切らして聞いてくる。
私はハツとし、ただただ恥ずかしくなって逃げるのだった。 いや、大学生までの話である。
本屋で、ズラリと並ぶピカピカの本を前にした時も、私は似たような気持ちになる。 1冊1冊の本を前に、胸をときめかせ、読み心地を探るのだ。

ああっ、この本が、今、私がほしい本ベストワンだわっ。 いや、お風呂でノンビリ読むならこっちかな。
あ、いや、この前、書評欄に載っていたこの本も、試してみたい……。 本屋は、スーパーの食品売場のように、「買うの、買わないの?」と、サッサッサッと、数冊選びだし、レジへ並ぶ。
私のように、「いや、待てよ。 買わなくても、図書館にあるんじゃないか」なんて、ケチな発想とは無縁らしい。
私も、彼と本屋へ入った時くらい、Hさんは、「コレとコレを」購入を急かされず、ノンビリ過ごせる点も魅力だ。 彼は作家だから、当然のごとく、本屋をぶらつく習性があった。
私を食事に連れて行く前や後に、本屋にブラりと入り、白く、細い指を棚ざしの本の背に当てながら、この本はどう、あの本はいけない、などと、しばらくブッブッやるのである。 私は隣りで、ただただ聞いているだけだったが、いつまでも飽きない、楽しい時間だった。
夫は、というと、本はワクワク興奮する、というより、癒し、だったのだろう。 本の中身がどんなものだろうと、ただ本に囲まれるだけで、穏やかな気持ちになれるようだった。


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